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イタリア在住日本人が語る、アジア人差別の現実と向き合い方

本記事は、YouTube動画「イタリアでの人種差別私達の経験を話します【イタリア生活】」をもとに執筆しています。

長年イタリアに暮らす日本人が実際に受けた差別体験を語り、どのようにそれを乗り越え、どんな心構えを持つべきかを伝える内容です。旅行や留学、仕事などでイタリアを訪れる人にとって、現地のリアルな一面を知るきっかけになるでしょう。

目次

結論:温かい国の中にも、見過ごせない現実がある

イタリアは一般的に人が温かく、日本人に好意的な印象を持つ人も多い国です。

しかし、現地に長く住む日本人の間では、アジア人であるがゆえに偏見や無意識の差別を受ける場面が少なからず存在することが分かっています。

特に新型コロナの流行以降、アジア人を一括りにして「危険」とみなすような反応が増えたといいます。

とはいえ、全てのイタリア人が差別的というわけではなく、多くの人はむしろ「そんなことがあるなんてひどい」と共感してくれるのも事実です。問題は、少数の心ない人々の言動が日常生活の中で静かに心を傷つけていくことにあります。

コロナ禍で顕在化したアジア人への偏見

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動画の語り手であるイタリアガイドの「みめ」さんは、イタリアに住んで26年になります。

コロナが始まった当初、街を歩いていると、道の向こう側から来た高齢のイタリア人夫婦が、自分の姿を見るなり慌てて反対側の歩道に移り、通り過ぎた後にまた戻ってくるという行動を何度も見ました。

その様子はまるで「アジア人=コロナを持ち込む存在」と見なしているようで、強い疎外感を感じたといいます。

さらに、春先に犬の散歩をしていた時、10歳前後の子供たちが駆け寄ってきたので「犬を触りたいのかな」と思ったところ、いきなり「チンチャンチョン」とアジア語を真似てからかってきました。

子供のいたずらだと思いながらも、その背後にいた母親たちが何も注意せず、むしろ見て見ぬふりをしていたことに深くショックを受け、夜も眠れなかったそうです。

また、コロナ以前にも、イタリアの美容室での出来事がありました。

初めて訪れた美容師に髪を引っ張られたり、カラー剤を雑に扱われたりし、持参した鞄にまで薬剤が飛んでシミがついてしまったため「もう少し丁寧にしてほしい」と伝えると、その美容師は逆上し「あんたたちアジア人は中国人の店に行けばいいのよ」と吐き捨てました。

明らかな人種差別発言でしたが、みめさんは怒りを抑え、代金を支払って店を出ながら「二度と来ない」と告げたといいます。

現地日本人たちの声:30年暮らしても消えない偏見

フィレンツェ在住で30年以上イタリアに暮らす日本人女性も、自らの経験を語っています。

コロナが落ち着き、スーパーで買い物を再開できるようになった頃、ソーシャルディスタンスを守って並んでいたにもかかわらず、後ろにいた他国人が距離を詰めてきた際、店員がその人ではなく自分に向かって「もっと距離を取りなさい」と注意したのです。

明らかに「東洋人=感染源」という先入観から来る対応でした。

また、駅でマスクをして歩いていたとき、マスクをしていないイタリア人から「お前らが持ち込んだんだろ」と言われたこともありました。

その女性は「イタリア人の多くは日本に良い印象を持っているけれど、アジア人全体に対する恐怖や偏見は根強い」と話しています。

「中国人だ」と決めつけられる日常

別の日本人女性は、フィレンツェの中央市場で働いていた際、店の前を通る人たちに「ここは中国人の店だから買うのをやめよう」と言われたといいます。

何度もそうした言葉を聞くうちに、「日本人だよ」と言い返す気力すら失われていったそうです。

スーパーでも「中国人か日本人か」と尋ねられ、「日本人だ」と答えると「それならいい、中国人は嫌いなんだ」と返されるなど、差別があからさまに言葉で現れることもあるといいます。

こうした背景には、フィレンツェ近郊のプラート地区にヨーロッパ最大規模の中国人コミュニティが存在し、一部のイタリア人が「自分たちの町が中国人に占拠された」と感じていることがあるようです。偏見の根底には、経済的・社会的な摩擦があると分析されます。

「見えていない存在」として扱われる痛み

さらに、インテリア関係の仕事で15年以上イタリアに住む別の女性は、自分が「存在していないかのように扱われる」経験を語りました。

コロナ前は欧米人が歩道を譲らなかったのに、感染が広がると急に道を避けるようになり、「アジア人が来た」と認識された途端に距離を取る。

これにより、今まで自分が対等な存在として見られていなかったことを逆説的に悟ったといいます。

また、ウフィツィ美術館のエレベーター前で順番を待っていたとき、列を無視して押しのけてきた欧米人に「並んでください」とイタリア語で注意したところ、「英語かドイツ語で言わないと分からない」と言い返され、まるでアジア人は同じ「人」として扱われていないと感じたと語りました。

差別とは罵声や暴力だけでなく、相手の存在を無視するという形でも現れることを改めて痛感した瞬間でした。

差別に遭った時の3つの心構え

動画の最後では、万一人種差別に直面した際に取るべき3つの行動が紹介されました。

1.とりあえず逃げろ!

まず第一に、身の安全を最優先にすることです。

相手がしつこく追いかけてきたり、言葉で威圧したりする場合は、反論せずにすぐ安全な場所へ避難するのが鉄則です。危険が去った後に落ち着いてから、大使館や警察に報告しましょう。

実際、オランダでアジア人が「中国に帰れ」と怒鳴られた事件の際も、現地大使館は「まず逃げて命を守る」よう勧告しています。

2.一人で抱え込まない

第二に、一人で抱え込まないことです。差別的な出来事は、その場では気づかず、後になって心に重くのしかかることが多いといいます。

「あれは差別だったのかもしれない」と思ったら、友人や家族、現地の知り合いに話して気持ちを共有することが大切です。抱え込むことで不眠や不安が募り、帰国を早まってしまう人もいるため、精神的なサポートは欠かせません。

はっきりと意思を示す

そして第三に、危険がない状況であれば、はっきりと意思を示すことです。

みめさん自身も、かつて高級レストランで空席があるにもかかわらず端の席に案内されたことがあり、スタッフに「なぜあの席が空いているのに座れないのか。私たちがアジア人だからですか」と抗議しました。

すると店側はすぐに対応を改め、席を変更してくれたといいます。このように、冷静に意見を伝えることで相手が自分の行動を省みるきっかけになることもあるのです。

言葉に自信がなくても、翻訳アプリなどを使って簡単な英語やイタリア語で伝えるだけでも十分です。

差別にどう向き合うか

イタリア社会には、今も地域や世代によって意識の差があります。

特に観光地では外国人が多く、多文化が交錯する反面、「違い」を受け入れきれない人々もいます。しかし同時に、正しく理解して支えてくれる友人や現地の人々も確実に存在します。

差別は決して被害者の責任ではありません。

重要なのは、自分を責めず、安心できる環境を確保することです。誰かに話すこと、報告すること、そして必要であれば毅然と主張すること。それが次に同じ思いをする人を減らす一歩になります。

まとめ

イタリアは芸術と文化にあふれ、人々の陽気さに惹かれて訪れる人が絶えません。

しかし、その華やかさの陰で、アジア人に対する誤解や差別が今も残っている現実があります。

コロナ禍を経て、それはより表面化しました。とはいえ、ほとんどのイタリア人は日本人に対して好意的であり、助けてくれる人も多いのです。大切なのは、差別を恐れすぎず、しかし無防備にもならず、冷静な対処法を身につけておくこと。

旅行や留学、駐在などでイタリアを訪れる人は、この記事の体験談を参考に、もしもの時のために自分の身を守る準備をしておくとよいでしょう。差別のない社会を目指す第一歩は、事実を知り、声を上げることから始まります。

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