この記事は元動画のタイトル「【インド解説】何がヤバい?世界一カオスな国を現地からわかりやすく解説」を基に作成しています。
先に結論
インドの“ヤバさ”は無秩序ではなく多様性の圧倒的な密度にあります。
人口14億人で世界一、言語は数百、宗教も価値観も食習慣もバラバラ。
結果として、旅行者は強烈な体験をする一方、ハマる人はとことんハマる。
ポイントは三つ。
衛生と詐欺に注意すること、宗教と右手左手などのマナーを尊重すること、そして“英語ができる人もいれば読み書きができない人も多い”というギャップを前提に動くこと。
これを押さえれば、インドは怖い国ではなく、唯一無二の学びと驚きに満ちた場所になります。
インドを数字でつかむ
人口は約14億人で世界一。
世界人口の5〜6人に1人がインド人。
国土面積は約328万平方キロメートル。
言語は約260種類と言われ、紙幣の裏面には主要17言語で額面が表記。
ヒンディー語話者は約5億人だが、残りの9億人は別の言語を使う。
識字率は約75%で、約4人に1人が自分の言語を読めない。所得格差も極端で、2020年時点で約66%が年収65万円以下、超貧困層は推定1億7000万人規模。
指標 | 数字・比率 | 補足 |
---|---|---|
人口 | 約14億人 | 世界一 |
言語 | 約260種(紙幣裏に17言語) | 国内で相互不可解が日常 |
ヒンディー語話者 | 約5億人 | 多数派だが半数未満 |
識字率 | 約75% | 読めない人が約3.5億人 |
年収65万円以下 | 約66% | 貧困が根強い |
超貧困層 | 約1.7億人 | 1日250円以下 |
ベジタリアン | 約3分の1 | 宗教観の影響大 |
シク教徒 | 約1.7% | ターバンはごく少数派 |
交通事故死亡 | 年間約15万人 | 世界最多規模 |
自動車販売シェア | スズキ約60% | インド限定車種も多い |
通貨ルピーと物価感覚
通貨はルピー。
目安は1ルピー≒約1.8円。紙幣は50、100、200、500、2000ルピーなど(1000ルピーはなし)。
ガンジーの肖像が表、裏に17言語の額面表記。ストリートのチャイは10ルピー台と激安だが、屋台や大衆食堂は衛生面のリスクが高い。
多言語社会と英語の位置づけ
インドでは出身地が違うと同じインド人同士でも言葉が通じないことが珍しくない。
そのため相互通訳として英語が機能。
エリート教育を受けた層は英語が堪能だが、読み書きできない人も多く、社会の分断は大きい。旅行者は英語での最低限のやり取りを準備しておくとよい。
宗教が生活を形づくる
国民の約8割がヒンドゥー教。牛は神聖視され、牛肉は基本的に食べない。
イスラム教徒も多く豚肉を避ける店が一般的。結果として鶏肉と野菜が主流。輪廻転生の思想からベジタリアンも多い。右手は清浄、左手は不浄という感覚が根強く、食事、握手、金銭の受け渡しは右手を使う。
歴史的背景
1947年にイギリスから独立。非暴力・不服従を掲げたガンジーが“建国の父”として敬愛され、誕生日の10月2日は祝日。紙幣や学校に象徴的に掲げられている。
服装のリアル
ターバンの印象が強いが、実際に巻くのは主にシク教の男性のみで全体のごく一部。
女性はサリーが広く着用され、男性は普段は洋装が多い。儀礼ではクルタパジャマを着ることがある。
食文化を現地目線で
カレーは“スパイスで煮たおかず全般”という広義の概念。
北インドの定食ターリーには、マサラ、サブジ(野菜煮込み)、ダル(豆カレー)、米、チャパティが一通り並ぶ。
現地では発酵させない薄焼きのチャパティが主食として一般的で、日本で人気のふわふわのナンは観光向け。
辛さは青唐辛子で自己調整する文化。ラッシーやチャイなど甘味飲料は強烈に甘い。グラブジャムン(ドーナツのシロップ漬け)は“世界一甘いお菓子”と称されるレベルで、糖尿病の多さとも相関を感じさせる。
現地オーダー例
- 豆のカレーを食べたい → ダル
- 定食を食べたい → ターリー
- 辛さを足したい → 付属の青唐辛子をかじる
衛生と腹痛は“通過儀礼”
水道水は基本的に飲用不可。
生野菜や食器洗浄にも水道水が使われるため、大衆食堂では高確率で腹を壊す。
整腸剤や経口補水液、ウェットティッシュは必携。ボトルの封が開いていないことを確認し、氷は避ける。屋台は慎重に選ぶ。
マナー超入門
食事、握手、支払いは右手を使う。
左手は不浄とされる。人前で残り物を回し飲み回し食いする行為は嫌われる。
チャイの素焼きカップが使い捨てなのは“他人の唾液を避ける”価値観ゆえ。宗教日や寺院内では服装や撮影のルールを守る。
詐欺と“悪気のない間違い”に要注意
デリー駅周辺は呼び込みや“案内役”を装う詐欺が多い。
タクシーが勝手に提携ホテルへ連れていくケースもある。
さらに厄介なのが、道を尋ねると知らなくても自信満々に嘘の方向を教える“親切な間違い”。複数人に聞くより、地図アプリと公式カウンター、ホテルのフロントを軸に動くのが安全。
時間感覚と交通のカオス
鉄道は数時間から“まさか”の十数時間単位で遅れることがある。
約束の時間にも人が来ない、店が開かないは日常。
道路は“自分優先”の哲学が渋滞とクラクションの洪水を生む。交通事故死亡者は年15万人規模。徒歩での横断は現地の人の流れに合わせ、無理をしないこと。
それでも走る日本車とスズキの強さ
可処分所得の高い層が3億人以上いるため、自動車市場は巨大。
インドの新車販売は日本を上回り、車両の約60%をスズキが占める。現地生産で価格が安く、道路事情に合わせたインド専用モデルが豊富。軽サイズは新車でも30万ルピー台(約50万円)からというレンジ感。
旅の実践チェックリスト
持ち物
- 整腸剤、経口補水パウダー、常備薬
- アルコール除菌シート、ポケットティッシュ
- 解熱鎮痛薬、絆創膏、日焼け止め
- ペットボトルホルダー、水の封印チェック用ライトは不要だが“未開封確認”の癖付け
- SIMまたはeSIMと地図アプリ、オフライン地図
- マイクロファイバータオル、薄手の長袖(寺院・日除け・冷房対策)
現地でのコツ
- 飲み物の氷は避ける
- 屋台は人気店で回転が速い店を選ぶ
- タクシーやリキシャは配車アプリ利用が無難
- 第一声で値段を確定してから乗る
- 右手で受け渡し、宗教施設では服装と撮影を確認
こんな人にインドは刺さる
- 未知の文化に飛び込むのが好きな人
- “予定通りに進まない旅”を笑って楽しめる人
- 食と宗教と歴史の関係に興味がある人
- 人の多様性に圧倒されたい人
逆に、完璧な衛生と時間厳守、予定調和を求める人にはハードモード。まずは短期滞在で“試す”のがおすすめ。
まとめ
インドは“世界一カオス”ではなく“世界一多様性が凝縮された実験場”。
宗教が食を決め、右手左手のタブーが衛生観念を育み、言語の断層が英語の必然性を生み、巨大な人口が市場を膨らませる。衛生と詐欺に構え、マナーを尊重し、時間に余裕を持って一歩踏み込めば、他のどの国にもない発見に出会えるはずです。
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